阿雲加奈の霊的日常

世界はいつだって目まぐるしく巡っている。

 

我が家は朝からお母さんが洗濯バサミをベランダ外に落としちゃうし、

職場は朝から事務だの事故処理だのでてんやわんやだし。

 

家を、職場を、巡回ルートを、休憩室を。

街を、店を、プールを、家を。

過ごすべき時間に過ごすべき場所で過ごせることはなんて幸せなことだろう。

 

最近は深夜だけ、週1くらいで彼女の側に。

眠った時、鼻を啜ることもなく、ただ無音で涙を流す理由が

自分だと知った時はなんとなく罪悪感でいっぱいになったけど。

その直後に「あぁ、貴女はこんなに私の事を気にしてくれていたんだね」って

こんなに優しい親友を持てて幸せだと。

そこまで考えてやっぱり申し訳なくなって、ごめんね って

触れもしない指先で彼女の涙に触れた。

 

その日の夜は彼女の側にずっと座っていた。

女の子とは思えないほどの量を平らげ、それでもまだ飲み続ける彼女の隣に。

酒豪もびっくりするほどの飲酒量にはらはらと心配してしまう。

自宅、彼女が1人呟いた言葉は

1人暮らしにしては広い部屋を反響して返ってきた。

うーん。 身体に悪いし、そろそろ飲むのやめたらどうかな?

苦笑いしながら、触れもしない手を彼女の頭へと伸ばした。

 

当初から口にする人ではなかったけれど、

私に関する彼の最初の行動は、耳にバッチンと穴を開けたことだ。

その口にする人ではない彼が、最近になって私の話をすることが増えた

私の話が落ち着いた後に、リングピアスに触れて

小さくその名を呟くことを、私と彼女だけが知っている。

・・・私の名より、彼女の名を呼んだ時の表情の方が好きなんだけどなぁ。

ピアスに触れる彼の手に、触れもしない手の平を重ねた。

 

 

世界はいつだって目まぐるしく巡ってる。

勿論良いニュースばっかりじゃないし、誰にだって悪いことも起きる。

だからと言って、世界が悪いことだらけなこともないはずなんだ。

 

街で見かけた彼女の姿は、いつもサイドテールでくくっている髪を下ろしていた。

彼女の隣に立つ長身の男性にも随分と見覚えがある。

 

今日は2人でお出かけかな。

どこに行くんだろ。 楽しんできてね

 

喋りながら私の前を通りすぎてく2人の背中を笑顔で見送る。

 

「・・・?」

「? 秋恵サン、どーかしたの」

「ん・・なんか懐かしい感じが・・・や、なんもない! ほら、はよ行こー」

「おー。 ってか秋恵サン歩くの早いよ、引きこもりに優しくして」

 

行ってらっしゃい。

手の平をひらひらと彼女達へ。

 

さて、今日はどこへ行こう?